映画 それから(1985日)
夏目漱石の小説がどれくらい映画化されているかというと
虞美人草(1935、1941)、坊っちゃん(1953、1958、1966、1977)、こころ(1955、1973、蒼箏曲2012)、三四郎(1955)、吾輩は猫である(1975)、それから(1985)、夢十夜(2007)
けっこうあるものです。比較的映画になりやすい『坊っちゃん』は4度、人気の『こころ』は3度。漱石の小説を映画にして面白いのかどうか興味があったので、見てみました。主人公の永井代助を松田優作、ヒロインの三千代を藤谷美和子、監督は森田芳光。脇を小林薫(平岡)、 笠智衆(代助の父)、中村嘉葎雄(代助の兄)、草笛光子(兄嫁)が固めます。
こちらによると、1986年度の第31回キネマ旬報賞日本映画監督賞・ 第28回ブルーリボン賞監督賞・第10回報知映画賞監督賞・第9回日本アカデミー賞優秀作品賞、優秀監督賞、最優秀助演男優賞(小林薫)、最優秀録音賞(橋本文雄)を受賞しています。
明治42年の小説を昭和60年の映画にどの様に翻案するかです。
一言で云うなら『それから』は「姦通小説」です。「姦通」とは所謂「不倫」のことで、旧刑法では「有夫ノ婦姦通シタルトキハ二年以下ノ懲役ニ處ス其相姦シタル者亦同シ」とあり、この小説が朝日新聞に連載された明治42年、不倫は犯罪だったわけです。当時の読者は、この「姦通罪」を意識の端に置いて『それから』を読んでいたことになります。
ふたりは大学を卒業し、平岡は銀行に勤め三千代と結婚し、代助は職に就かず親のスネをかじり社会に出ず学生時代を続ける”高等遊民”となります。父親が実業界の実力者であり、長兄が家を継いでいるからできるわけです。代助なりの理屈はあるようですが、世間に出ることを拒んだことになります。
門野さん、僕はちょっと職業を探してくる
映画は代助と三千代のメロドラマに力が入っていますが、『それから』のキーワードは、姦通と高等遊民と銀杏返しと百合の花です。
原作:夏目漱石
出演:松田優作 藤谷美和子 小林薫
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